2019年11月25日(No.3)

「偉人の名言から学ぶ投資の心得 -その2-」

古今東西の「偉人の名言」は大変投資の参考になります。今回はその中から2つ ご紹介します。

今回は、史上最も偉大な投資家と、史上最も有名な剣豪の言葉をご紹介します。

投資先企業を選ぶ際の参考になります。

ウォーレン・バフェット アメリカの投資家1930年~

  1. 分散投資は無知に対する防衛だ。自分たちの行動を理解している者にとって、殆ど意味が無い。
    (Diversification is a protection against ignorance. (It) makes very little sense for those who know what they are doing.)
  2. 世界の莫大な富は、一つの素晴らしいビジネスを保有し続けることにより生まれた。そんなに沢山持つ必要は無い。
    (A lot of great fortunes in the world have been made by owning a single wonderful business, you don’t need to own very many of them.)
    出所:”Warren Buffett Speaks “by Janet Lowe 1997

「長期・積立・分散」を資産形成の王道として、どこの金融機関もどのアドバイザーも推奨しています。しかし、分散投資についてはこの偉大な投資家は、資産を大きく増やすための有効な手段とは認めていません。

私も、中国株投信の運用や日本株投信の企画をした経験がありますが、ポートフォリオに50も75も銘柄を分散して組み入れたことはありません。それは、多くの選択肢の中から、自分が十分に理解できる範囲に銘柄を絞り込めてこそプロだと自覚していたからです。

そして、その最適な銘柄の数は13だとも気づきました(その理由については別の号でご説明します)。また、国際分散投資についても、聞こえは良いのですが、ポートフォリオが動物園のようになってしまうので、個人的に全く賛同できませんでした。

宮本武蔵 江戸時代初期の剣豪 1584~1645年

(五輪書 水之巻「兵法の目付と云事」より)

  1. 眼の付け様は、大きく広く付けるなり。観見の二つあり、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、近き所を遠く見ること、兵法の専なり。敵の太刀を知り、聊かも敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事なり。工夫あるべし。

13歳からの60回余りの勝負で無敗だった武蔵の敵の見方が、資産運用で投資先企業を選別する上での参考になります。

前半の一節は、企業を表面的に見るのではなく、広い視野(距離と時間)で観察する事が大変重要だと言っているように聞こえます。

続く後半の敵の太刀を見るのではなく太刀を知るとは、株価の動きに眼を奪われないで、その企業のビジネスの本質、ファンダメンタルズ(敵の場合は生い立ち、流派、能力、武器、心理等か)を見極めなさいと指南されているようです。

また、これは五輪書にはありませんが、武蔵は敵との対戦の前にその戦場に何度も出向いて、地形や太陽の方向等の情報収集を入念に行ったようです。更に、負けそうな相手とは勝負しなかったとも言われています。

このような武蔵の慎重な考え方は、上記のバリュー投資家バフェットの、企業の本質的価値と市場価格の差である安全マージン (Margin of Safety) を見極め、リスク度を理解してから、それが許容できる企業にのみ投資を決めるという、最も重要な投資哲学に似ています。

巌流島の決闘で武蔵が、舟の かい を削って小次郎の「物干し竿」よりも長い木刀を使ったのも、この安全マージンという考え方に近い気がします。

武蔵は、勝負に勝つというより、如何にしたら負けないかを論理的に突き詰めたようです。

因みに五輪書は、”The Book of Five Rings” という題で英文に訳され、ハーバード・ビジネススクールの経営学のテキストとして活用されています。

どんな困難な状況においても勝ち抜く、究極の現実主義者と言われる武蔵の剣術の奥義をまとめたこの兵法書は米国の企業経営にも参考になったのですね。

(次号からは、インド経済の可能性についての私見を述べます)