2019年12月25日(No.4)
「インド経済の可能性① ー 地理的な見方 ー」
インドのように大きくて歴史の長い国は、地図で地理的に、そして年表で時間的に考察しないとその経済の可能性が見えてこないと思います。
今回は地理的に見てみます。
地図で観るインド経済の大きな可能性 |
上の地図には、イギリス、アメリカ、カナダの大学のカレッジや研究所が予測した世界経済の長期の方向性を、線と面と点で載せています。
まずは、地図の中ほどで横に伸びている黒い線についてです。これはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授が2011年に発表した、世界経済の重心の東へ移動を示しています。
ご覧のように世界経済の重心は1980年時点では、モロッコのカサブランカ沖の大西洋上にありました。それが2008年には、中国と東アジア経済の台頭により、エーゲ海に面したトルコ西部の都市イズミル辺りに移動しました。そして、2050年には重心は更に東進して、中国とインドに挟まれたネパールのカトマンズ辺りになると予想されています。
このように、世界経済の重心は、40年前には欧米の真ん中にありましたが、30年後にはアジアの真ん中に移動すると見られています。
次に、オレンジ色の点にご注目下さい。
これらは2018年にハーバード大学の国際開発センターが独自のモデルで、試算した2018年から2027年までの国別年平均経済成長率ランキングの上位20カ国です。ウガンガ、タンザニア、ケニヤなどのアフリカの東側の諸国と、インドネシア、ベトナム、ミャンマーなどのアセアンの国々がそれら上位の大半を占めていますね。
そしてインド(大きめのオレンジ色のピースマーク)は、それらの高い成長が予測される国々の扇の要に位置しています。これからの世界経済の成長の中心は、このように面で観た場合、インド洋経済圏になる可能性が高いと思われます。
日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想も、中国が威信をかける広域経済圏構想「一帯一路」も、この面の成長地域への関与がこれからの自国の経済発展や安全保障には欠かせないと理解しているからかも知れません。
最後は、赤い星のマークについてです。これらはトロント大学のグローバル都市研究所が2014年に発表した世界都市圏人口ランキング(2050年予想)において上位5位に入った都市です。
1位はインドのムンバイ(4,240万人)、2位はインドのデリー(3,615万人)、3位はバングラデシュのダッカ(3,519万人)、4位はコンゴのキンシャサ(3,500万人)、そして5位はインドのコルカタ(3,304万人)との予想でした。因みに2010年のランキングでは、東京の3,609万人が首位で、以下メキシコシティ、ムンバイ、北京、サンパウロの順でした。
人口の都市圏への移動(都市化)は、欧米でも日本でも中国でも、経済発展の強力なエンジンでした。ですので、インドや他の南アジア、そしてアフリカの国々でこれから予測される急速な都市化は、同地域の経済発展に大きく寄与すると考えられます。
以上、地図上で地理的に線と面と点で観てきた世界経済の長期的な展望を総合すると、勿論それらの予測がピッタリと的中するとは思いませんが、大局的に観た場合、インド経済の発展の可能性は相当に大きいと期待されます。